第二話 真剣勝負

5/7
前へ
/251ページ
次へ
「…これで剣術の試合は3勝2敗僕が上だ」 キルシュがあたしを見下げて言う。 「別にあたしは好きで貴方と闘ってる訳じゃないんだけど…」 あたしがボソッと負け惜しみを言うと、 「うん。僕もだよ」 にっこりと返された。 ほんとどこまでもムカつくなぁ。 「仕方ないでしょ。力量や技術が大体同じ位なんだ。普通に勝ち進めばイヤでも当たる」 シャキン、と、キルシュが鞘に模造剣をしまう。 「手、怪我してるね。君のことだから持ちすぎて痛めたんでしょ」 くす、とキルシュが見下げた笑みを浮かべる。 悔しい。そんな顔さえ美形なんだもんな。 「うっさいな…はいはい、坊ちゃんはお強いですよ」 あたしは立ち上がると、ロングブーツやスカートに付いた砂を払った。 汗でベトベトする。早くシャワー浴びたいなぁ。 「…君、ふざけてんの?」 キルシュが横目で睨んできた。 そうだ。こいつはお家の話題になると不機嫌になるんだっけ。 「いいえ。とてもとても。ふざけるなんて滅相もない」 あたしが少しおどけて言うと、キルシュは、 「いつか…ぶっ潰したげるよ」 悪魔みたいな笑みであたしを見た。 すたすたと戻っていったので、あたしも行くことにする。 こわいなー。 女の子相手にそこまで言うかぁ? あたしってよっぽど嫌われてんだな…
/251ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加