第三話 まどろみの一時

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ざぁあああ… 温かいお湯があたしの体を撫でてゆく。 あたしは、昔の事を思い出していた。 八年前に魔法事故で死んでしまった母さんが、よく読んでくれた…この世界の歴史を記した本。 確か、その本があたしにはとても面白くて、あたしはそれに目を通すうちに周りの子の誰よりも早く字を書けるようになったんだっけ。 きゅっ。 蛇口を閉めて、あたしはタオルを取りに出た。 「ふー。…さっぱりした」 体全体を拭いて、それから服を着る。 どうせこれから家に帰るんだし。上着とかは着ずに、カッターシャツにリボンを締めて、スカートというラフな格好。 髪も結い上げるのが面倒くさいので、たらしたままにした。 ガチャ。 ドアを開けて、エントランスの方に出る。 「チフルーっ」 呼んではみたが、いないようなので ぼふっ、とあたしはエントランスの赤いソファーに腰掛けて待つことにした。 「はー。まだかなぁ」 履いていなかったロングブーツに脚を入れる。 黒いニーハイソックスの上からはく。あたしはこのファッションが好きだ。 「よしっと」 チャックをちゃんとと太もものところまで上げて、脚をぶらつかせる。 その時。
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