第四話 兆し

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「はっ!…せやっ!」 かけ声と共に剣を振り上げる。 歩を踏み脚をうまく使って、剣を真横に振る。 ーキルシュがそうしたみたいに。 「はぁっ、はぁ…」 剣を下ろし、呼吸を整えた。 「ちょっと、張り切りすぎたかな」 ふぅ、とため息をついて、あたしはそこに倒れていた大木に腰をかけた。 誰も居ない朝の森。うっそうと茂る樹木がそびえ、鳥や動物の声がするだけだ。 あたしは剣の稽古をしていた。 早くに起きてしまったので、リア姉を起こさないようにして家を抜けてきた。 …じゃないと、余計なことを考えてしまうから。 あたしは気分が暗い時や、落ち込んでいる時は、こうやって武術の稽古をする。 そのせいで女子で一番たくましくなったんだろうな。 「う~っ」 ぐーんと手足を伸ばして背伸びをする。気持ちいいんだよね、コレ。 「はー。さて、そろそろ戻りますか」 誰も居ない空間で独り言。 剣を持って森の中を進んだ。
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