第五話 不安

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「あの、先生…?」 連れてこられたのは、図書室の奥だった。 「ここだよ」 先生が大量の本がしまってある棚のひとつを指差す。 「…へ?」 あたしが不思議そうな顔をしていると、 先生がその棚にしまってある本のひとつを手の甲で押す。 ぐ… ギギギギギギッ。 「!?」 奇妙な音を立てて、地面が鳴き出す。 「少し揺れるけど気にしないでね」 そう先生に言われたけれど、あたしは疑念が晴れなかった。 「…何を、する気ですか」 つい聞いてしまう。 すると、先生は冷徹な眼で、あたしに言った。 「君は黙って見ていなさい」 ー氷みたいに冷たい、起伏のない声で。 ぞくり。 あたしは背筋が凍るような感覚に襲われて、立ちすくんでしまった。 …怖い…! 少しして、ゆっくりと本棚が動き出し、棚があったそこには、壁ではなく下へ続く階段があった。 「さぁ、ついて来くるんだ」
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