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コツ、コツ…
ブーツのヒールが床に打ちつけられて音を立てた。
「……」
あたしは短い階段を無言で降りていく。
そして入ったのは、石造りの、神秘的な祠の様な所だった。
朱と蒼の炎の燭台が、何か石版の様なものを囲んでいる。
ー何なんだろう、これ。
「待たせたね。これを君に見せたかったんだ」
ジン先生があたしの方を振り返る。
「…これは、何なんですか?」
あたしは警戒を解かずに尋ねた。
朱く輝く、丸い水晶の様なものを中心に、訳の判らない紋様と文字が刻まれている…石版。
「ああ、これのことかな。…美しいだろう」
先生が、細い指でその朱い水晶を撫でた。
「これはね、宝玉だよ」
横目であたしの方を見て言う。
…ほう、ぎょく ?
「何ですか、それ。」
あたしにはその言葉が解らなかった。
知らない、聞いたことのない言葉だ。
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