第五話 不安

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コツ、コツ… ブーツのヒールが床に打ちつけられて音を立てた。 「……」 あたしは短い階段を無言で降りていく。 そして入ったのは、石造りの、神秘的な祠の様な所だった。 朱と蒼の炎の燭台が、何か石版の様なものを囲んでいる。 ー何なんだろう、これ。 「待たせたね。これを君に見せたかったんだ」 ジン先生があたしの方を振り返る。 「…これは、何なんですか?」 あたしは警戒を解かずに尋ねた。 朱く輝く、丸い水晶の様なものを中心に、訳の判らない紋様と文字が刻まれている…石版。 「ああ、これのことかな。…美しいだろう」 先生が、細い指でその朱い水晶を撫でた。 「これはね、宝玉だよ」 横目であたしの方を見て言う。 …ほう、ぎょく ? 「何ですか、それ。」 あたしにはその言葉が解らなかった。 知らない、聞いたことのない言葉だ。
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