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だが、ルイにとって姉は、格の違う人間であり、自分にとって重荷になることもある。
最も両親がいないルイを育ててくれているのは姉であるリシェリアなのだが。
「リア姉は優しいし美人だし、魔法もすごい…かといって妹のあたしもそうとは限らないもの」
ルイはじっと、他の生徒の試合を見ている。
膝の上に置いていた手が、震えていた。
努力しなければ。
周りの期待に応えるためにも。
「ルイ…」
その時だ。
『第13試合は東棟前で行われます。出場する人は集合して下さい』
「あ、あたし行かなきゃ」
ルイが立ち上がる。
「…怪我とかしないでね。」
チフルが心配そうに見上げてきた。
「大丈夫よ。あたしは強いんだから」
ルイがにこ、っと笑ってみせる。
「…手…」
「ん?」
「手、剣の持ちすぎで腫れてる…」
チフルがルイの白い手のひらに触れた。血豆のところに、自分のハンカチを巻く。
「グローブ使わなきゃダメじゃない」
チフルにそう言われ、
「だって持ちにくいんだもん」
ルイが反論する。
普通重い剣などを持つときは、滑らぬようにグローブなどをはめたりするのだが、
ルイは基本素手で持つため、さらに握りすぎで血豆が出来ている。
「これ位平気。」
ルイは一度気丈な笑顔を見せると、
「次は最終…アイツとなんだよね、ヤだなぁ」
苦笑いを浮かべて言った。
「キルシュくんだね。頑張って」
チフルが応援してるよ、と言いながら立ち上がる。
「ありがと。じゃあ、またね」
ルイが手を振ると、チフルも手を振り返す。
…そして二人は別れた。
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