勇気

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由里姉が家を出てしばらくして、私は身支度を整える。 もちろん家事も早々に終わらせたので文句は言われまい。 「行ってきます」 数年前の癖がぬけきらず、思わず口に出してしまう。 いってらっしゃい、なんてしばらく聞いていないのに。 少し憂鬱な気持ちになるのも、いつものこと。 素早く思考を切り替えて、通学路に出る。 「おっはよー! 菫ちゃーん! 会いたかったよ~!」 そして、いつも通りはた迷惑な大音声が響き渡る。 振り返る先に、砂埃と『ドドドド』という効果音を撒き散らし向かってくる影一つ。 おそらく、いや、間違いなく『彼女』である。 「ヤッフー、菫ちゃんゲットだぜ!」 彼女は両手を広げ私にダイブ、熱い抱擁のコンボを決める。 「きゃっ」 速度が殺されるわけもなく、私と彼女はアスファルトを転げ回る。 「イタタタ。ちょっ、緑先輩。道端で抱き着かないでって、いつも言ってるのに」 「何を寂しいことを言うのだね。私と菫ちゃんの仲じゃないか」 笑顔を爆発させる彼女、名を『大和 緑(やまと みどり)』。 二年上の最上級生である。
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