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父娘の形式
父はいつもそうだった。仕事に忙しく、土日もほとんど会社に出ていて家にいなかった。父と遊んだ記憶はない。小学校に入るまでは父親とはそんなもんだと思っていた。小学校に入り、周りの友達が「家族で旅行に行った。」等と言う話を聞いて羨ましく感じた。
「なんでお父さんはいつも仕事が忙しいの?」
「仕事が好きだからかな。」
母はいつもそう答えるのだった。
父は、電化製品の大手企業に勤めていた。家には会社の製品が数多くある。テレビも、掃除機も、音楽プレイヤーもそうだ。
父は、自分の会社に誇りを持っていた。二言目にはここはもっとこうした方がいいなぁ。ここはこう。などといつも話していた。父娘としての会話はあまりなかった。
美優が入院したときも、仕事が忙しかったみたいで、お見舞いに来たのは一度だけ、それも一時間ほどだけだった。
その時美優は初めてといいぐらいゆっくりと話した気がする。
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