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美優が窓を開けたのは午後三時を少し過ぎた頃だった。少し湿り気を交えながらも空気は澄み渡っている。西の空にはまだ雲が見えている。それでも、まだ日差しが残るこの季節は、まだまだ暑かった。新鮮な空気で肺をいっぱいにする。
遠くから笑い声が近づいてくる。よく見ると小学校の低学年ぐらいの子供が傘を振り回しながら歩いてくる。
「くらえ!聖剣クレイモアっ!」男の子が傘を振り下ろした。
「とりゃっ!」
もう一人の男の子が傘で弾いた。勢い余って隣にいた女の子にあたった。
「こらっ!いい加減にしろ!」
「うるさーい!今いい場面なんだよ」
「あやまりなさいよ」
女の子がグーを振り上げると、男の子達は走って逃げ出した。女の子は怒りながら追い掛けていった。やがて声は聞こえなくなり、姿も見えなくなった。
美優はそれを見ながらうっすら微笑み、まだ声を出せた小学生の頃を思い出していた。美優にとって人生の全てが変わったあの頃を。
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