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風が強い日があり、雨の日もあった。友達の悠君が風邪で休んだ日もあった。それでも美優は毎日が楽しいかった。勉強も面白かった。楽しくない日が来るとは知らなかった。
夏休みに入ってからの事であった。美優が友達と遊んで帰ってきてからご飯ができるまでの間テレビを見ているとインターホンが鳴った。
「美優出てくれない?」
「はーい。どちら様ですか?」
「竹本です」
「おばちゃんどうしたの?」
「はい、これ。回覧板ね」
「あっ、はーい。ありがとうございます」
「美優ちゃん、礼儀正しいわね」「もう6年生ですから」
美優が得意げに笑う
「じゃあ言うてるまに中学生ね」「うんっ。今からとっても楽しみなんだ」
たわいもない会話を少しした後竹本おばちゃんは帰っていった。
「お母さん、回覧板」
「なんて書いてある?」
「えっとね」
美優は回覧板の内容を抜粋して読み始めた。
「あの竹本おじちゃんの田んぼがあった所らへん工事してたやんか、あそこになんかの薬を作る工場ができたらしい。それだけ」
「じゃあはんこ押して次に回しといて、ごはんももうすぐできるから」
「はーい」
美優は家をでると工場の方を見た。夏の夕暮れに赤く照らしだされた工場は、ひときわ大きく見えた。
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