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すっかり狼狽したらしい紫が外に出て橙の促すままに閉じた傘の先でエンブレムをへし折るのを見て、藍はさらに不安になった。
『ああいうものは販売する際にきちんと取らないと。いやねえ、まったく』
車内に戻って藍の視線に気づいたのか、紫は運転席に半分潜るとクラッチを踏み込んだ。
『まあ、あなたたちはよく知らないでしょうが、車ってのは少しエンジンを暖めるのよ。まあ、あなたたちには言っても理解できなかったでしょうが』
そして、車は走り出した。
『狐はね、藍くらいの年になると卵を産むのよ。少し前の話になるけれど』
『紫様、いったいどこまで行くのですか』
橙に嘘を吹き込みつつ、マヨヒガを爆走している紫に藍が尋ねた。
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