八雲ドライブ

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『このまま出口近くまで行きましょうよ』 不意に、ああっ、と橙が声をあげたが、とても横を向ける状況ではない紫に代わって藍が身を乗り出した。 『どうした、橙』 『こんなもの見つけちゃいました』 えへへ、と笑うと橙は手の上に乗った黒い物を藍に渡した。 『これは』 藍には皆目見当の付かぬものだった。 がっしりとした握りがあり、先端は細く穴があいておりズシリと重く鈍い光沢を放っている。 『どこにあったんだ、橙』 橙はダッシュボードを示した。 『ちょっと見せて』 紫は一目それを見るなり、微笑んだ。
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