匂いと記憶

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『この梅雨が明けたら、またアツイ夏がくるね!』 美咲は梅雨の中弛みのアツイ日差しに眉をひそめながら言った。 「今年の夏もアツイらしいから、また日焼けしちゃうよ…」 麻美は美咲に返した。 『ねぇ!』 「んっ?」 『匂いと記憶って深く関係してるって知ってる?』 美咲は続けた。 『ワタシね、夏の雨の匂いを感じると必ず甦ってくる記憶があるんだ!』 「夏の雨のニオイ?」 麻美は興味津々に聞き返した。 「って、あの部屋干しみたいな独特なニオイ?」 『…違うよ!部屋干しって…』 美咲は声を荒げた。 『あんた、全然ロマンチックじゃないね!』 「…」麻美は黙った。 『夏の焼けたアスファルトの上に雨が降ったあとの匂いをあんたは嗅いだ事ないの?』 「あんまり意識した事ないよ!」美咲も負けじと返す。 「で?雨の匂いが何?ミーちゃんは何が云いたいの?」 そんな下りを延々としたあとに、ワタシは美咲の切ないひと夏の純愛体験を聞く事になりました。
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