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「君の価値は君じゃない他の誰かがつけるものなんだよ」
先輩は言う。
夕暮れ時の屋上で夕日を眺める先輩はオレンジ色に染まっていた。
下校時刻を周り、校舎内に生徒はほとんど残っておらず、まさしく僕たち二人だけだった。
授業で僕にケチをつけた教師に楯突き、怒られてしまった。
その話を先輩にしたところ、先輩は笑いだした。
「そりゃそうだよ」と。
確かに今思い返せば突っかかるべきではなかったとは思う。
だが、「だからお前はアホなのだ」と罵られて黙っている方もある意味では変わっていると言えるだろう。
とにかく、僕は憤慨した。「あんたに何が分かるんだ」と。
顔を合わせてまだ二年目で学校以外では合わないというのに、僕が理解できていない僕を理解などできるはずもない。
いや、されてたまるか。
「まぁ…仕方ないよ」
先輩は振り返りながら言った。場違いにも、「ああ、この人はやっぱり綺麗だな」と思ってしまった。
腰まである長い髪と整った目鼻。見たことはないが、きっと体つきも良いに違いない。
「聞いてる?」
ハッと我に返る。
「聞いてますよ」
いかん。何を考えているのだ、僕は。
「どれだけ頑張っても、どれだけ努力しても、評価してくれるのは……価値をつけてくれるのは、自分以外の誰かなんだよ」
逆光のせいでよくは見えないが、今の先輩は微笑みながら、しかし酷く寂しそうな顔をしている事だろう。
「例えばそれは友人で、教師で、恋人で………」
先輩はもう一度振り返り、金網を掴んだ。
「例えばそれは、両親」
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