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先輩には二つ年上の姉がいた。容姿端麗、文武両道、品行方正と、いわゆる優等生だった。
将来を有望視され、両親の期待も高かった。それが理由なのかは分からないが、先輩の両親は先輩の姉ばかりを可愛がっていたらしい。
だから、どれだけ先輩が頑張っても先輩の両親は評価してはくれなかった。
先輩が「価値は他人がつける」と言った理由はここに帰結する。
「仕方がない事なんだよ。自己評価なんてあてにならないし認めても貰えない」
そういうものなんだよ。と先輩は言った。だが、それは少し悲しい気がした。
「だから、秋元先生がそう評価したなら仕方ない事なんだ」
それは━━
「けどね」
僕が口を開く直前、先輩はまた言葉を紡ぐ。
「そんな事を気にする必要はないんだよ」
振り返った先輩は笑っていたが、それには寂しさが混じっている気がした。
「分かりました」
と僕は答えながら先輩の隣まで歩いた。
「うん。私は両親にとっていらない子だったみたいだから…」
「先輩」
と、僕は先輩の台詞を止めた。
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