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「先輩はいらない子なんかじゃないですよ」
「けど、親に言われたら」
「今自分で気にするなって言ったくせに」
「それはそうだけど、それとこれとは別だよ」
「例えそうでも気にしちゃ駄目です」
「そんな簡単に、」
「少なくとも、僕には必要な人なんです」
二人とも動きが止まる。
「僕には必要なんです。先輩のお姉さんでも友人でも両親でもなく、先輩が必要なんです」
「あ…」
僕が何を言いたいのかを理解したらしい先輩はクスリと笑った。
「良いじゃないですか。自分の価値があてにならなくたって。他人の評価なんて理解できないものです」
「私が付けたとしても?」
「さぁ…」
と、僕は肩をすくめた。
「あ、逃げた」
吹き出した僕につられて先輩も吹き出した。そのまま二人で笑い出した。何が面白いのかは分からなかったけど。
「好きですよ。そういう風に笑う先輩は」
ピタリと笑うのを止めてしまった先輩は少し恥ずかしそうで、顔が赤いのはたぶん夕日のせいじゃない。
「やっぱり君は格好いいよ」
なんて言う先輩に、
「先輩は可愛いですよ」
なんて言い返した。
とにかく、何かに左右されない自分を持つ事が大事なんだと思った。
でも、それだけだと寂しいから、僕らは一緒にいるためにお互いに価値を付けた。
ほかの何かに左右されないために。
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