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どうやら彼も失敗するらしいと認識するまで、少しばかり時間を要した。
「俺やおまえの人生で、失敗なんてのは通過点でしかないのさ」
「通過点…?」
「そうさ。どれだけ頑張ったって失敗するときは失敗するだろ?本当に大切な事は失敗を放棄しない事だ」
また良くわからない教えを説かれてしまった。
「失敗から何かを学び取れ」
なんだろう。彼は何を言いたいのだろう?
「思い悩む暇があるなら体を動かせ。練習を重ねろ。それでもバトンを落としたなら拾えば良い」
ああ。なるほど。と思った直後に今までずっと彼を見ていた事に気付いた。
おや、なんだろうこれは。どうしたことだろう。んん?
嫌に脈拍が速い。まるでリレーの後みたいだ。あれ。なんか顔が熱いような気がする。
「成功の裏には常に数十回の失敗が隠されている。たかだか一回の失敗で思い悩むな。悔しがるなら百回失敗してからにしろ。えらい人は言ったもんだ」
「…一幸は強いね。そういう格言をちゃんと活かして生きてる」
「そうでもない。俺だって弱い人間さ」
「そう?」
「ああ。そうさ」
そして彼は笑った。ケラケラとまるで子供のように。
今度は私も笑ってみる。
ケラケラと、まるで子供のように。
また明日から頑張ろうと思った。
彼との距離を縮められるように。
まぁ、とりあえずは。
失敗を悔やまないようにしようと思う。
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