55人が本棚に入れています
本棚に追加
実際よ。
冷静に考えてみたら、急ブレーキとかいらないわけだぜ。
法定速度キチーッと守って転がしてりゃあ、神様は見てるんだからよ。
轢きっこないべ。
だから、数フィートは余裕を持って、ゆ~っくり停車したわけさ。
車を降りると、おれはすぐ人影に近付いたんだ。厄介ごとはごめんだけど。ほっとくのもなんか、アレだし。
そう考えながら、おれは飛び出してきた人影に向かって歩き出した。
ところが、その時おかしなことが起きたんだ。
霧が出たんだ。
ただの霧なんかじゃない。
特濃~の霧がよ、突然車の後ろから迫ってきてよ!おれの仏滅号も人影も、全部飲みこんじまったんだ!
それこそ爪先も見えないくらいのすんゲー霧で、請け合ってもいいけど、あんな濃い霧は生まれて初めてだった。
自然に出来る濃さなのか?とか考えちゃったもんよ。
一瞬だけど。
けど、事態はそれでおわりじゃないんだ。
霧に驚いて振り向くと、おれの目の前には見慣れた仏滅号のサイドミラーがあった。
いつも頼りになる、仏滅号の片腕さあ。いつだって安全はサイドミラーからだって、うちの社長も言ってた。
顔は見たことないけど。
だけど、事態はそれでおわりじゃないんだ。
車のサイドミラーに、普通じゃありえないもんが写り込んだんだ。
今でもはっきり覚えてる。
忘れられるわけがないべ。
あれは間違いない。
ありゃあ女の子だった。
いきなり湧いた濃い霧の中をよ
突然飛び出してた変な奴のすぐそばでよ
青いワンピースを着た、髪の短い女の子が、鏡の中に立って、こっちを見てたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!