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「はぁ……」
思わず気の抜けた返事をしてしまう。
予想外だわ。
こうも必死に探しているのだから、もっと緊急性のある重要な用事かと思ったのに。
「あいつ、もし見つからなかったら今度の飲み会で潰してやる!」
いかにもイライラしてますと言わんばかりに瞳をギラつかせながら先輩がうなる。
嘘っ!?それだけはまずい!
この先輩は気に入らない後輩に「場の盛り上がりが悪くなるだろ」とか「空気読めよ!」とか言って無理矢理酒を飲ませ、急性アルコール中毒で二人ほど病院送りにしたことで有名な人だ。
やると言ったからには本当にやる気だろう。
まずいわ!
なんとかしないと涼夜が……。
「じゃ、進藤またな」
先輩はまた涼夜を探しに行ってしまった。
「なんか、危ない感じの先輩ねぇ……」
危ない感じなんかじゃない。
実際に涼夜が危ないのよ!
「あ。そういえばさっきの先輩が言ってた涼夜ってひょっとして……」
「わ、私。ちょっと用事を思い出したから先に行くね!後でメールするから先に好きな所で食べてて!」
「おーおー。愛しの涼夜君に危険を伝えに行くんだね!ついでにその切ない気持ちも伝えちゃいなよ!キャハハ」
「バッ、バカ!そんなんじゃないわよ!」
「へーへー。とりあえず早く行きなさいよ。涼夜君に伝えないといけないんでしょ?い・と・し・の」
「バッ、バカ!だからそんなんじゃ……」
「ほーらー」
そ、そうだ! 言い争いしてる場合じゃない。
早く涼夜を見付けないと――。
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