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◆ ◆
「と、どうしたの進藤さん。何か用?」
振り返った先に居た進藤さんは、見るからに不機嫌そうなオーラを漂わせながら俺を睨み付けている。
「こ、こんにちは神崎君。今日もいいお天気ね」
ひきつった笑顔を浮かべながら不自然なまでの丁寧な挨拶。
――怖い。
そのひきつった笑顔の裏に凄まじい怒りを感じる。
俺、何か怒らせるようなことしたっけな?
進藤さんには嫌われてるから、なるべく研究室でも近寄らないように気を使っていたつもりだったんだけど……。
「きょ、今日はね?ちょっと伝えたい事があって……」
伝えたい事?
こんな怒りながら伝えたい事ってなんだ!?
普段、俺と居ない時に見せる可愛い笑顔との差に、背筋がスッと寒くなる。
そのまま進藤さんは俺との距離を詰めるように一歩前へ出た。
恐怖から、思わず反射的に一歩下がる。
その瞬間、進藤さんのこめかみにピクリと青筋が浮かぶのが見えた気がした。
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