終る夏

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 ◆ ◆ 「いやああああああああああああああああ!」 (おい、また例の発作が始まったぞ) (そっとしとけ。すぐに治まるから) 突如絶叫した俺の耳に、腫れ物に触れるような表情で話す氷口とホライゾンの囁きが聞こえた。 い、いかんいかん。 思い出してるうちに変なスイッチが入ってしまったらしい。 「す、すまん」 一言謝り、平静を繕って話を戻す。 「で、なんの話をしてたんだっけ」 ここは大学の講堂の一角。 「大人になったって実感したことってどんなことか……って話だよ」 先ほどの講義で今学期の授業は終わり、大学は明日から夏休みに入るのだ。 夜からのバイトにはまだ時間があり、それをもて余した俺はホライゾン達を捕まえて時間を潰していたところだった。 「夏休みは何するんだ?」 って話していたら、いつの間に全然関係ない話に擦り代わっていたらしい。 「人目をはばからずに酒が飲めるようになったってことかな」 「うんうん、人目をはばからずにってのがポイントだよな」 俺の言葉に氷口がうなずく。 「お前は?」 「うーん、ケーキに巻いてあるセロハンをはがした後、それについたクリームを舐めなくなったときかなー」 「あー、あるある」 「ホライゾンは? 」 「カップアイスのふたを舐めなくなったときだな」 「あー、あるあ……そんなんばっかかよ!」 「あんたら何してんの?」 そんな下らない話をしている俺達に、帰り仕度を終えたちぐさが話し掛けてきた。 内心動揺しつつも平静を装おい、今まで話していた内容を説明する。 ついでにちぐさの話も聞いてみた。 「お前はどんな時に大人になったって感じた?」 俺がその質問を口にしたとたん、ちぐさはカッと顔を赤くし、口元を手で隠した。 「し、知らないわよそんなの!あんた馬鹿なんじゃないの!?」 真っ赤になったちぐさはそんな捨て台詞を残し、止める間もなく走り去ってしまった。 突然のちぐさの行動に、取り残された三人はポカンとした顔で扉から出て行くちぐさの背中を見送った。 ちぐさが扉の向こうに消えた後、氷口とホライゾンが示し合わせたようにこちらを向いてニヤリと笑った。 …………なんなんだよ、もう。
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