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新学期が始まり少し経った。
それでもまだ残暑は厳しく、日中はうだるような暑さが残っていた。
昼休みを終え、講堂に入った俺と氷口をクーラーに冷やされた快適な空気が癒してくれる。
「あー、大学ってこれがいいよな。高校は教室にクーラーなんてなかったし。クーラーは人類史上最高の発明だよ」
「俺は私立だったからクーラーあったぜ?氷口は公立か」
「うわ、マジかよ……。ところでさ」
氷口は言葉を切り、今朝から何度もしたように自分の頭を指差した。
「この髪型どうよ?」
氷口は夏の終わりに長かった髪をバッサリ切って、イメチェンを図っていた。
今の髪型はショートのソフモヒだ。
短くさっぱりとした髪の中心が、申し訳程度に少しだけ立ち上がっていた。
何だかよく分からんがさっぱりしたかったらしい。
俺の第一印象は『ちび丸子ちゃんに出てくる玉ねぎ頭のあいつ』だったのだが、本人に言うと傷付くだろうから言ってない。
あいつの名前、なんだったかなー……。
喉元まで出かかっているのに、ズバリ出てこないのがもどかしい。
とりあえず優しい俺は、ちび丸子ちゃんのキャラみたいと言って傷付ける代わりに、
『玉ねぎみたい』
とだけ言っておいた。
泣いた。
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