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「……なんで、下がるのよ……」
明らかに怒りを抑えた口調で進藤さんが問いかける。
も、もちろん怖いからです……。
しかしそんな事を言ってしまったら火に油ならぬガソリンを投入するようなものだ。
しかもハイオクを。
爆発するように燃え上がり、辺りは火の海に包まれることでしょう。
と、天気予報のように予測してみたところで事態は一向に好転しない。
むしろ悪化した感すらある。
答えられずにひきつった愛想笑い浮かべる俺に対し、また一歩、進藤さんは距離をつめてきた。
俺も反射的に一歩下がる。
さらに近付く進藤さん。
さらに後退する俺。
進藤さんの口元がピクリと引きつったのが見えた。
「なんで……逃げるのか……なぁーー!」
進藤さんが、まるで弾丸のような鋭さで俺に向かって土を蹴って走り寄る。
掴もうと伸ばされた手をなんとかすり抜けると、俺は身をひるがえして走り出した。
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