過ぎ去った日々の果てに

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様々な流れて行く季節達はやがて、留まる事なく忘却の空へ向かって、音を立てる事なく去って行く……。 曖昧な記憶や存在は色んな形にその姿を変え、そしてさもそれが当たり前の形だったように残って行く。 だとすれば……、女性画家が高校時代に描いたその似顔絵。 いずれ人々の記憶の中から、葵のように真戦組の存在すら知らない若者達も次第に増えて来る事だろう。 だからこそ、それを忘れぬように形に残し、一生忘れぬようにしたい。 忘れ去られて行く人々の記憶の中に、はっきり存在した確かなその男の存在。 女性画家の展覧会にすら並ばず、何処に行く時も手放さず、まるで宝物のように女性画家が保管しているその一枚の絵。 今や新進気鋭の天才画家と呼ばれる麻衣の展覧会の応接室のテーブルの上に置かれたその似顔絵。それは…… 満面な微笑みを浮かべる、麻衣自身が描いた無邪気な佐久間の優しい姿があった……。
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