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「あ。ほら、色々勝手に押しかけちゃったお詫びー。て言っても、なんだか冬子君順応性あるみたいだから余計なお世話かもだけど。」
アルファは台所の下をごしゃごしゃと漁り、フライパンやらおたまやらを発掘しながら問いに答えた。
「いや・・・まあ、ありがたいっちゃありがたいけど。」
流石に帰れとは言えないし、言うつもりも無かった。ただ母さんの作っていった方をまだ完食していなかったからちょっと複雑な気分だ。
と、俺がお握りを一つ取ったとき、アルファがそれに気付き近づいて来た。
「あー。お握りだー!」
そして残りのうちの一つを手に取り、ラップを剥がした。
「えと、食べていい?」
「剥いてから言うな。別にいいけど。」
俺が言うと、アルファは「いたらきまー。」と口を開けて早速それをかじった。
「はふ・・・冷めてもおいしー。」
未来から来た魔法少女がお握りをもきゅもきゅと食べているという不思議な光景を目にしつつ、なんとなく彼女に言ってみた。
「未来にもあるのか?」
「んく。あるよー、お握りはニッポンの伝統だもん。」
ニッポン・・・片言な感がどうしても無視できない。つーかこの子は日本人なのか?・・・まぁいいけど。
「・・・いいお母さん。なんだか羨ましいな。」
何故母さんが作ったと解るんだろう。俺がそれを問うと。
「お母さんが作ったものって、なんだか暖かい気がするの。」
一瞬、アルファの表情に憂いを見た気がした。
「他人の母親のでも解るのか?」
これまたなんとなく聞いたのだが、答えが帰ってくるまでの時間が、何処か長く感じた。
「・・・あは、やだなァ。あたしにとってお母さんなんて、みーんな他人だよ?」
「・・・は?それって、どういう・・・」
尋ねる終わるより前に、アルファが動いた。
あはは。そう笑いながらアルファは俺の肩をぱふんと叩き、台所に歩く。
そしてフライパン片手に振り向き、
「冬子君のお母さんに負けないくらい、美味しい朝ごはんにするからね!」
そう、彼女に一番似合う笑顔で宣言した。
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