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「それじゃ・・・飯も食ったし、そろそろ。」
アルファの作ったのは普通のオムライスだったのだが、これが意外な事にクオリティが高く味も良かった。
「どおだった?」
「ああ、美味かったぞ。」
「やったぜ!」
腕を広げ喜ぶアルファ。
「さて・・・あ、もうこんな時間か。」
気付くと時刻は、歩きでギリギリ間に合うような時間になろうとしていた。
玄関に向かい靴を履くと、我が家に向かい挨拶をする。
「「行ってきまーす。」」
・・・。
・・・。
・・・。
は?
二つの声が重なった事に不信感を覚えた俺は、何故か一瞬に玄関に立っているアルファを見つめ、ある重大な事実に気がついた。
「お前・・・!その恰好!」
白のブラウスに赤のリボン、下には黒いチェックの入った赤地のスカート。
うちの制服だ・・・。
「今日から晴れて!冬子君と一緒の学校でーす!」
何故最初に気付かなかったのだろう、くそ、寝ぼけてたさっきの自分が非常に憎い。
「つかな・・・制服とかどうしたんだよ?お得意の魔法で作ったのか?」
「作ったわけじゃないけど、うん。魔法だよ?」
玄関を開けながら話すアルファ。学生鞄に洒落たストラップなんか付けちゃってもう行く気満々だよこの子。
仕方なくアルファにならい、外に出る。なかなかの快晴。風が初夏の暑い空気の中を駆け抜けていった。
「Σ(シグマ)法術で、こーちょーセンセの記憶をちょこっと。」
「正攻法のせの字も無いな・・・」
「大体・・・お前らの言うその、ホウジュツ?って何なんだよ。未来人は魔法使いか。」
「んと、あたしは頭悪いから解んないし、最も詳しくは話せないんだけど。」
家の前の布石の上をぴょんぴょん跳ねつつ、空を指差す。
「今日の雲と昨日の雲は、併せて十個ありました。」
「・・・なんの話だよ?」
いきなり雲の話になる。
「また、今日の雲と昨日の雲の値段はそれぞれ、百円と二百円でした。あたしが買った合計は二千六百円。」
一つの布石の上に止まり、振り返りざま言う。
「昨日と今日の雲。値段を求めるには、それぞれをX、Yと置かなきゃいけない。」
「それとホウジュツってのと、どういう関係があんだよ?」
「つまりそういう事。何かを定義し名付ける事で、新しい事象を発生させる。それが法術なんだって。総監が言ってた!」
言わんとしている事は解るけど、本当にそんな事できるのだろうか?
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