【一章】新ジャンル。リアル馬鹿系。

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「なにが、あったの。」 「Σ法術がね・・・?」 アルファを彼女から引きはがし、とにかく”同類”っぽい臭いのした彼女に助けを乞うてみたところ。 「まだ、あまり使わないほうがいいと言ったわ。」 「うう・・・ごめんなさい。」 なんだこれ、説教か? 「で・・・これ、どうにかなるのか?」 ちびっこが自分より大きな子を正座させて説教するなんて滑稽なシーンを堪能したい節も無きにしもあらずではあったのだが、いかんせん今は本来ロングホームルームの時間。余裕をこく程の時間が無い。 しかし急かす俺に対し、彼女はどこまでも冷静に対応する。 「大丈夫、今・・・」 正座の状態から立ち上がり、教室全体を見渡すと。 彼女もまた、先のアルファと同じくして何やら聞き取れない呟きを漏らし、言った。 「再生・・・β(ベータ)。」 彼女が空に手をかざすと、教室の真ん中に小さな淡い緑色をした光の球体が形勢された。 「・・・範囲は?」 横目で俺に問う。 「え・・・?あぁ、この教室にいる、俺とアルファ以外の人間・・・か?」 「解った。」 受け応えをすると、彼女はすぐ前を向き直る。 すると目の前の光体が球の形を維持したまま肥大化し、ちょうどクラスメイト全員をつつみこむ程の大きさにまでなる。 「・・・どんな状態にしたいの。」 今度は俺ではなくアルファに問うた。 「えと・・・1番新しい10分間の記憶を無くしてる、とか。」 「解った。」 了解の意を彼女が示すと同時に、球体の天井から緑色をした光の雨が降り始めた。 「しーちゃんはね、総監お墨付きの天才なんだ。」 いつの間にか寄り添ってきたアルファが、何故だかひそひそと小声で言う。 「普通は二つの法術を使う事だって難しいのに、しーちゃんはもう四つも法術を使えるんだよ。」 「何がすごいのか、実感できねーよ。」 俺も釣られて小声で返す。 「・・・あなたが、本条冬子?」 と、その時不意にちびっこの彼女が俺に目配せをし言った。 「あ・・・あぁ。」 じっと見据えられ多少たじろぐ。何だこれ、見つめ合ってんのにキュンキュンしねぇ。 すると、「・・・ふふ。」と静かに笑んでみせ、また前に向き直ってしまう。 「・・・Θ(シータ)。」 彼女が呟く。一瞬何か呪文をとなえたのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。 「私の・・・名前。」 前を向いているから、表情は見えなかった。
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