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「ふえぇーっ!何で怒ってるの!?解らないよぉ、しーちゃんんんん」
ぴーぴー泣きながら、俺の右腕の中でシータにポカポカ殴られるアルファ。つか、流石にそれは解りましょうよ・・・。
「貴女は今研修期間の筈。本来なら助けなんて無い。それでも私は助けてあげたの。」
左腕に抱えているシータがアルファにゆっくり言い聞かせる。
「うん。そうだよね、ありがとう!しーちゃん大好き!!」
ごつん!
「ふぇーん!!」
反射的なボケに反射的なツッコミ。うん、漫才にしか見えない。
「天然なのは重々承知してる。それにしても、ひど過ぎる。」
「くすん・・・だってぇ・・・。」
飴と鞭と言うが、さてはて、その飴とやらはいつ与えられる事やら。
「っと・・・!ここだ。」
そうこうしている内に、いつしか俺は目的の場所に着いていた。
階段を上がった1番上。ぽつんとそこにある古びたドア。
そう、屋上だ。
騒ぐアルファとシータをそこに降ろすと、俺はポケットから小さなくまの人形がついた鍵を取り出す。確か39人目くらいの彼女から貰った鍵だ。
それを鍵穴に差し込み、右に回す。カシャンと心地の良い音がし、古びたドアがひとりでに開いた。
爽やかな風が吹き込み、髪を揺らす。
「さ、とりあえずこっち来い。」
二人を促し、外に出る。
「うわー!すげー!」
アルファが騒ぐ。ホント、感性が純粋というか何と言うか。
そして俺は、突如現れたシータという少女を今一度見据え、問う。
「いきなりお前が出て来たのにも、なんか意味があるんだろ。」
フェンスをがじがじ登り始めるアルファを指し・・・って危なっ!?
「こら、んなとこ登んなっ・・・!こ、こいつが、俺を守りに来たようにさ。お前も、何か意味があってここにいるんだろ?」
アルファを引きずり降ろしながら言う。
「私は、ただのその子の監視役。」
「監視・・・?ああ、そういやさっき、なんか研修期間がどうのとか言ってたな。それと関係があるのか?」
「ええ。私達スペルユーザー・・・俗に言う法術使いは、一定の修行期間を経て研修期間へ移行し、その段階でその者の法術が社会福祉に貢献し得るものだと判断されれば、公認の法術使いになれる。アルファは持ち前のα法術が買われて、研修生に昇格した。」
「お前は?」
「私は、公認のスペルユーザー。」
・・・多分凄い事なんだろうけど、やっぱり実感が沸かないな。
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