【一章】新ジャンル。リアル馬鹿系。

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「・・・未来の嬢さんが何の用だよ。」 半ば投げやりに聞く。すると、俺と裏腹に自分をアルファと名乗る彼女は真剣な表情になって 「今のままだと、世界が3000年まで保たないかもしれないの。」 「・・・は?」 付いていけてない生徒を見捨てる教師よろしく、アルファは「借りるね」と近くにある広告紙とペンを拾い、なにやら作図し始めた。 そこには四角い囲いと、その中に入ってる円。 中の円には、その中にAと書き、四角い囲いと円の間にはAの上に一本線を引いた記号を描く。 その図を見た時、俺はひとつピンときた。 「これ・・・集合と補集合の図か?」 確か、高校に入りたての頃教わった気がする。各要素の収束体を”集合”と言い、それらの要素から外れるものの集合を”補集合”と言うのだ。Aは集合を指し、Aの上に一本線(バー)の記号は補集合を意味している。 「へぇ、そうなんだ?今知った!」 アルファが答える。つかさっきから思ってたけど元気だなこの子。 「・・・で。これが一体何だと?」 「うん」と頷きつつ、アルファはその図に字を足していく。 Aの上にアルファと書き、Aバーの上にアルファバーと書く。 「”アルファ”っていうのは、この世界の名前なんだって。」 「世界って・・・なんか曖昧だな。お前の言う世界ってのは、地球だけじゃなく過去も未来も宇宙も含めて世界か?」 「万物は常に表裏共に有り、この世もまた然り。」 質問には答えず、目を閉じ胸を張って何か格言じみた事を言うアルファ。 「・・・何だよ、それ?」 少し間があって、俺が聞くとアルファは片目を開けて答える。 「”世界”の真理、だよ。黒には白、赤には青。正反対のものがあって、それが同じ重さだからバランスが取れる。星も、宇宙も、人だって。それぞれ表と裏がある。」 暗に俺の先程の質問を肯定している事に気付く。 「あたしたちは”α”。そして、あたし達の反存在が” ̄α”。交わる事がない、二つの”世界”。」 いつの間にかまた目を閉じているアルファ。 俺は、アルファの話に聞き入っていた。 「・・・なーんて!全部受け売り!」 呆けている俺を置いたまま、アルファは手をしゅばっと広げてバタつかせる。 はっと我に帰り、アルファに問うた。 「で・・・、その件と俺と、一体どういう関係があるんだよ。いっとくけど俺はマジで普通人なんだからな」
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