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「詳しい事はあたしの口からは教えられないんだけど・・・んっとね、襲われちゃうの。」
「誰が、誰に?」
「冬子君が、”α ̄”に。」
「はぁ?」
これまたファンタジックな事態になってきた。
「あたしは冬子君を、守りにきたんだよ!」
しかも俺は守られる側なのか。女の子に。
「つーかな、なんで俺が襲われないといけないんだよ?限定されてる意味が解らねぇ。」
その”α ̄”とやらに、俺はなんか怒られるような事をしたのだろうか?ごめんなさい。したなら謝るからもう自室で寝かせてくれ。
しかしそんな心からのお願いを知ってか知らずか、アルファは緩い口調で話す。
「んー、それはあたしたちには解らないんだよね。歴史上、冬子君は襲われる事になってるのが解ってるだけで。とにかく今は、交わるはずの無い”世界”が交わり始めちゃってて、糸を引く誰かが裏にいるって事しか解ってないの。だからあたしが今出来るのは、この時代にいる”α ̄”達を片っ端からやっつけて”世界”のバランスを少しでも元に戻す事だけなんだ。」
延命措置、という事か。
しかし、それじゃあ・・・
「いつケリが付くんだ?まさかいつまでもこのままなんて無いよな?」
「うん。最近やっと解決の糸口が見えたところだから、あと少し頑張れば冬子君はもう安全だよ!」
「へぇ・・・んじゃま、頑張ってくれよ。その”α ̄”とかいうのの退治。」
出来るだけ他人事にしようと思い、そう言った。
アルファは、自分の家があるからと言い帰って行った。帰る途中、道ばたからこっちを向き直り何度も「ちゃんとご飯食べてねー!」とか「寝る前は齒磨くんだよー!」とか「今日の9時から8ちゃんねるーっ録画ー!」とか・・・ておい最後のは何だ。録画か。録画しとけってか。
とにかく色々言うもんだからこっちはご近所さんの目が気になって仕方ない。
「わーったから!お前はお前で頑張れよ!」
最後まで第三者的立場を崩さず。その日俺とアルファは別れた。
これで大丈夫。
そう思っていた。
この時までは。
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