第三章・・・ストレッチングルーム

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最後に、中年の男の絵だが、絵が伸びるにつれて、彼が男に肩車してもらっているのがわかる。   しかし、それだけではなく、肩車をしている男もまた三人目の男に肩車をされているのだ。 そして三人目の男は足までがどっぷり砂に浸かっている。砂には「Quicksand」と書かれた看板が………   この不気味な絵に描かれる三人の男は屋敷の使用人である。 上の男からアサ・ギルバート、エディー・フォスター、ダニエル・パターソンである。   彼らは旧知の仲で、最初は三人とも後にマスター・グレイシーの一番目の妻になるリリアンの下で雑用係をしていた。   彼らはリリアンの下で働く中でそれぞれリリアンに対して恋心を持つようになり、一時はそのことで喧嘩をした。 しかしその後、三人はお互いに女性のことでは二度と喧嘩はしまいと誓い合い、このことで彼らの仲は一層深まった。   リリアンがマスター・グレイシーと結婚すると、三人は屋敷の使用人として雇ってもらえることとなり、屋敷に移住した。     しかし、彼らはふとしたことから屋敷の使用人であるマダム・レオタの娘であるリトル・レオタと不和になってしまった。   母譲りの残忍さを持つリトル・レオタはこの憎い三人をどうにかして始末してしまおうとした。   そしてある嵐の夜、三人はリトル・レオタの要望で屋敷の外から流れる不気味な音の調査をするため、川に向かった。 しかし彼らは暗闇の中、方向感覚を完全に失ってしまい、動物の遠吠えに驚いて流砂の中に転げ落ちてしまった。 彼らは慌てて砂から脱出しようと肩車をして上に伸びる木の枝につかまろうとしたが、間に合わず三人とも沈んで死んでしまった。   今でも霧の濃い朝には三人の亡霊が屋敷に現れるという………
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