教会

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 単調な機械音で目が覚める。未だに眠っている頭を掻きながら俺は時間と言う物をこの時だけ本気で恨めしく感じる。  とはいい、そんな憂鬱な一時を満喫する猶予は残されていない。ベットから降りると手早く着替える。それが悲しい社会人の性。 「間に合うか………」  時計を見つめながらシリアルを掻込む。待ち合わせ時間8時10分、現在7時50分。ここから待ち合わせ場所まで30分。あ、無理だわ。 「―――マズいな」  いや、シリアルではない。単に生命に危機を感じての感想だ。それを考慮すると結構ドライかもしれない。シリアルを掻込む時間なんてないが体力はつけた方がいい。        楠木市の空気は肌寒い。羽織るボストンジャケットが暖かい。イチャつくアベックを流し見る。けっ、まったく幸せな奴だ。目障りな事この上ない。  いや別にひがんではいない。ただ無性に腹が立つだけだ。アベックの男と目が合う。慌てて目線を逸らし足早に目的地に向かう。向かう先に死が待っていても向かわなければ涅槃には到底逝けない。
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