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―――さて。
この状況はなんと説明すればいいのやら。
廃ビルに教会を建てているだけで恐いのに、その中で魔王降臨、といった言葉が似合いまくる彼女、もといアサツキ神父がいる。まじ恐え。
「おはようございます、アサツキさん」
返事がない、ただの屍の様だ。よし、さり気なく退社しよう。だって自分の命が一番恋しいからね。
「………だ」
「はい?」
生きていた。というか甦ったのか。ゆっくりと視線をこちらに向けた。いや、それだと語弊が生じる。正確には死線を向けた、だった。
「何度目だ……」
「何がでしょう?」
「―――――」
下手に刺激しないのが懸命と判断。
「……3回目ですかね」
「7回目だ、このど阿呆!」
率直な感想。家に帰りたい。
サヨナラ、俺。短い人生だったけど後悔はないよね。
「まぁいい。今日は忙しい。お前の相手はできん。」
「…………」
どうやら真剣な話らしい。
「また幽霊が出たそうだ。今回の自殺者は三名、三名とも女性との事だ」
「今月に入って九人目ですよね」
ああ、と短い返事をするアサツキ社長。最近連続して発生する事件。これがまた奇妙で皆自殺、それも突発的に起こるもので場所構わずなのだ。
だから目撃者も出る。目撃者によると突然自らの命を絶つ行為をするという。警察の調査によると全員死ぬような動機がないらしい。
誰がよんだか幽霊自殺。まぁこのての名前で持ち上げるのは週間雑誌の類だろう。
「幽霊か………」
意味なく呟く。それに律義に返事をする朝月神父。
「ああ幽霊だ。警察側は被害者達には関連性はない、と言っている」
まったく不可解な事件だ、と言いたげに顔をしかめる。
正直俺は朝月神父のこの顔が許せない。
朝月邑はかなりの美人だ。笑えば大概の男は落ちてしまうぐらいだ。そんな朝月邑はなにを隠そう神父なのだ。本来、女性が神父を勤める事はないが俺はアサツキさんがかなり男勝りなので男性と間違われてなったのではないかと睨んでいる。
アサツキさんは本来かなりの自信家で我が道を行くといった人なのだ。そんな彼女がそんな表情をするのが許せない。
「そこでだ。お前に調査してもらう事にした。頼めるな?」
「―――了解」
短く返事して。教会を後にした。
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