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ようやく報告書を書き上げ、ジャック=ハモンドはふと時計を見る。針は既に夜の十時を回っていた。
また、今夜も泊まりか。
欠伸を噛み殺しながら、彼は気分転換にラボを出た。
既に一般の職員達は帰宅し、残っているのは自分くらいだろう。
廊下の暗さも手伝って、たった今やりおえた仕事に空恐ろしさを感じ、彼は思わず身震いする。
肩をすぼめながらロビー兼休憩所へ向かうと、ぼんやりと明かりが漏れているのが目に入った。
まさかこんな時間に。
非科学的な思いが一瞬、彼の脳裏をよぎった。
意を決して角を曲がると、そこには他でもない、彼の同期の姿があった。
「……エド? まだ残っていたのか?」
お前さんは技術方だから、こんなに遅くまで残っていなくても、と言いながら近寄るジャックに、エドワード=ショーンは穏やかに微笑みながら片手を挙げた。
「君たちが苦労しているのに、僕だけプログラムを上げたから失礼しますともいかないよ。ただ、ちょっと気になってね」
今までのデータを見直していたら、この時間になった。
そう言ってエドワードは苦笑した。
こうして笑うと、日頃のどこか近寄り難い雰囲気は影を潜める。
もっとも、その表情をめったに見せることはないのだが。
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