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もしこの眼が全てみえるとしたら
この小指に巻き付いている赤い糸はみえるのだろうか
すでに引き返せないところまで来ていたのだ、この想いは―――
「なんで泣いているの」
同じように泣きながらあいつが俺を呼ぶ
溢れ止まらない涙を、あいつが長い指で拭う
「―――不安?俺が男だから?でも、ごめんね。離してあげれない。お前がいないと俺、呼吸すらできない」
そういって俺をきつくきつく抱き締める
嗚呼――もし俺に赤い糸が見えたら、その運命の相手はお前だ
だってお前のことを想うだけで涙が出てくる
お前の声を聞くと胸が締め付けられる
このまま死ぬんじゃないかと思うぐらい、お前は俺の中にいる
そんな事を考えていたら遠くで電話が鳴った
いつの間にか、あいつとの夢をみていたらしい
それは暗く闇のような世界だったけど、とても甘いしびれをもたらした
電話の主はもちろんお前
今は遠くに居て会えない
そんな遠いあいつは俺にこういったんだ
「もし俺の小指にある赤い糸が見えたら、それを引っ張ってお前を腕の中に抱けるのに」
思わず涙が出た
そんな夜
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