お母様、混紡の僕を恥じていらっしゃいますか?

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だが兄は知っていたのだ あの追手はお金しか見えていないと――― 生きていようと死んでいようと関係ない 要は二人を屋敷に連れ帰れば良いだけ お母様は同じ顔、同じ体を愛した僕ら双子を許せなかったのだろう 周りに知れ渡る前に消してしまいたかったのだ 僕らは汚点だ しかし弟を死なせるわけにはいかなかった 我が愛しの弟を―― 「いたぞ!兄の方だ!」 「殺せ!!」 「近くに弟もいるはずだ」 嗚呼、神様 どうか 優しい弟をお守りください 彼は気の利く優しい子 怪我をしている動物を手当てしては、「痛いね」と一緒に泣いてあげれる子 僕はあんな子を今まで見たことがありません。 どうか――――― 「兄様――――?」 急に涙が溢れる なんだ? ――胸が痛い 急に空っぽに、胸に大きな穴が空いた感じ 呼吸が苦しい 「兄様、どこ?僕、苦しいよ」 兄様?兄様? 兄様――――もしかして先にお空へ行っちゃった? 「はは、兄様。置いて行かないでよ。ずっと一緒だよって言ったじゃない」 ふと来た道を見ると煩い男達の声 さっきの追手だ 何を騒いでいるんだ 男たちの手元を見ると――― 血まみれになった、もう動かない愛しい兄様 抵抗しなかっただろうに、身体中には無数の斬り傷 嗚呼、苦しかったでしょう? 「汚い手で兄様に触れるな!!」 僕は夢中で戦った 刀を奪い、薙ぎ倒し、逆に斬られ―― 気付いたら辺り一面真っ赤な血の海 その中で良く映える兄様の黒い綺麗な髪 そっと兄様を抱き上げて、前髪をかきあげてあげる 綺麗な寝顔だった 「嗚呼、兄様は綺麗だ」 もう疲れたよ ―――兄様 もう休みましょう? 視界が霞んできた 手探りで兄の手を探し、掴む 更に体ごと抱き締めてあげる もう、これで一生離れない ああ、雪だ 兄様が好きな雪が降ってきましたよ――― もう誰も動かない ただ、雪が少年の頬に濡れ、まるで泣いているようだった
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