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車に乗り込もうとしている俺に、麗ちゃんが制止をかける。
麗ちゃんが、目を覚ませばここには用はないはず。
「麗ちゃん。あのさ、暗くならないうちに帰ろうよ。明日もあるしさ」
「坂本さん、せっかくだから、植物園を見に行きたいです……駄目ですか」
何故、ここから引っ張るかな。飯食ったし、もう満足だろ。
麗ちゃんの強引な説得に折れる俺…… 押しに弱いよな。
園内には珍しい植物から、どこでも見る事が出来る植物まで、ランダムに展示されている。
「植物園って、こうして歩いてみると、結構良いですね」
「そう、俺は退屈だけど」
ロマンチックの欠片もない。だから、モテないんだろ。……そんな事は、分かりきっている。
園内を回り、ハウスや建物内をすべて見ると、最後に屋外に出た。
「すっごい綺麗」
一面、黄色い世界。菜の花が広大な敷地に広がっている。
安っぽい表現しか出来ないけど、黄色い絨毯みたいだ。
両手を広げて、身体をゆっくりと回転させる麗ちゃん。ベタだな……まだ、酔ってるんだ。
「坂本さん、私と付き合ってください」
「へっ、なに」
「私の彼氏になってください」
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