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涼しげな春風の中にひっそりと佇むイタリアンレストラン、それは高級感丸出しの佇まい。
この街に続いて、更に場違いだぞ。麗ちゃんは俺に嫌がらせしてないか?
重厚なドアが開かれると、チーズとトマトの強烈な香りが春風に乗って運ばれてくる。
「麗ちゃん、この店高いんじゃないの? 俺に払えるかな」
「気にしないで下さい。社長から、食事代は出して戴いてますから」
「話しの筋が見えないんだけど、麗ちゃんのオゴリって事?」
「まぁ、お金の事は気にしないで下さい」
また、格好がつかない状況にもって行かれている。それも、完全に麗ちゃんのペースに追い込まれてるな。
テーブルにつきメニューを渡されても、料理名から実物がイメージ出来ない。
「わたしに任せてください」
なれた様子で、オーダーする麗ちゃん。もしかして、この店の常連なのか?
やがて、ソムリエみたいな人がワインを持ってきた。
「俺は運転があるので、結構です」
レディファーストで、ワインを提供した彼は一礼し下がっていった。
「ごめんなさい。私だけワインを飲んじゃって。もっと考えるべきでした……」
「別にいいよ。飲酒で運転が出来なくなったら、クビになるからね」
麗ちゃんは、謝りながらも瞳から妖しい光を放っている。
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