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まさか、ストーカーになるつもりじゃ、無いだろうな。
そうなったら面倒だけど、今は何も考えたくないし、考えないようにしよう。
そして俺にはもう、この場で何かをすることも、出来ることもないと判断した。
「柏木さん、ご迷惑をおかけしました。また、連絡しますね。失礼します」
「あっ、はい。どうも……」
唐突に立ち上がった俺に、柏木さんも驚いて呆気にとられたが、声をあげて泣き出した麗に、自分を取り戻したみたいだ。
扉を開いて、一度だけ振り替えると、柏木さんが麗に耳打ちしてる。
「えっ、なんで……」
柏木さんが、何を言ったか聞こえなかったが、麗は信じられないって顔をして立ち竦む。
「だって、味方だって……」
麗のそんな言葉を聞いた時、玄関の扉を閉めた。
柏木さんは、麗と何かしらの協定を結んでいたのかもしれない。それが、破綻したのだろう。
それが、何を意味するのか分からないが、麗の瞳の決意は消えていた。柏木さんの裏工作……彼女は何者なんだ。
それから2週間。
麗からの連絡は一切、無くなった。正体不明の無言電話や、迷惑メールに近いようなメールも来ない。
それは、職場に於いても同じで平和な日々が続いている。
「坂本さん、もしかして麗さんと別れたんですか」
「うん、どうして分かったの」
「最近の坂本さん、晴れやかな顔をしてるので、もしかしてと思って」
そんな顔して、仕事をしてたのか。
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