出会い

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  新宿二丁目は、スモーキンブギー。 客が50人も入ればパンパンになるような、小さなライブバー。ステージと客席の間には仕切も無く、申し訳程度の段差があるだけだ。   時は2007年、2月24日。 この日が、毛皮のマリーズのライブ。対バンはロマーンズと、良く知らないパンクバンド。   件の友人と、酒をちびちびやりながら時間を潰す。   「ロマーンズがさ、トイレでセットリストどうしようって相談してたよ」   楽屋、無いんかい。 まあ、これだけ小さいハコだしなぁ。   そうこうしてる内にロマーンズのライブが始まった。 数人のラモーンルックの、ファンらしき女の子や男の子が前の方でノっている。私も彼女達の演奏が楽しくなり、前の方で楽しく見させて貰った。 因みに、私はこの時からロマーンズファンである。   ロマーンズが終わり、転換を挟み、次のバンドが始まる。良く知らないパンクバンド。他愛も無い感じの、良くも無ければ悪くも無く、というバンドだ。 途中でクラッシュのカバーをしたのが楽しかったくらいで、後は退屈だった。   演奏が終わり、転換。 気がつけば、客が少し増えていた。 「前の方行っとこう」と言う友人に従い、前から二列目辺りに。 目の前に、背が高いお姉さんがいて、あちゃーと思った。前が見にくい。まあ、しょうがない。   気がつくと、ステージに人がいた。 黒髪をパッツンボブにした、黒革のツナギの女の子と、 派手な赤のジャケットを羽織った長髪の男の人と、 ドラムセットの所にアフロ。   確か、女の子がベーシストか。赤い人はギターか。   赤ジャケットの男の人は、これまた派手な金色のレスポールを抱え、女の子はプレベを構える。   客電が落ちる。   ギターがBを鳴らす。   あれ、ボーカルは?   ベースが唸る。 シンバルが……   ステージ横で何か動いた。振り向く。     そこには、バー備え付けのテーブルがある。 そこの床に、空のプラスチックコップが転がっている。       そして、テーブルの上に、   ロ ッ ク ス タ ー  『 悪 魔 』      がいた。
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