おまえと俺

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田舎に生まれ育った俺は、小4の頃転校してきたばかりのあいつとよく遊んでいた。 ずっと東京で育ったあいつはこっちの遊びなんて全然知らなくて、ずっと一人でゲームばかりしていた。 心配したあいつの母親が近所だった俺の親に相談した所、俺にあいつの遊び相手とゆうお役目がまわってきた。 そんなこんなで2年間、俺とあいつは兄弟に間違われるくらいの大親友になっていた。 何処に行くにも何をするにも一緒で、辛いことも苦しいことも全部分かち合ってきた。 そんなあいつと今日も川に釣りに行く所だ。 釣れても名前も分からないような子魚だけど、2人で静かに釣りをしてる‥そんな少しのんびりした、他の奴といる時にはできない時間が俺は好きだった。 「かじき‐」 あいつは俺をかじきと呼んでいた。 鍛冶谷優樹(かじたにゆうき)とゆう本名からだれかがつけたあだ名だ。いつ付けられたかもう覚えていない。人間の記憶って曖昧だな‥。 「かじき!」 そんなことを考えていたら、どうやら返事をしそこねていたらしい。 「悪い、悪い。どうしたん?」 慌てて返事を返すと 心配したような顔から一転、目を輝かせながら続けた。 「川のいつも行ってる場所、あそこで最近大きい影が目撃されてるらしいんだ。親父達が主かもって騒いでた!」 「あんなせいぜい10センチ程度の魚しか見たことない所でか?」 ちょっと疑いながら聞く俺。でも、あっちも譲らなかった。 「ホントだって!ウチの親父も、近所の武田さんちのじいちゃんとばあちゃんも、おまけに西野先生も言ってたんだ!」 こいつの親父ならともかく、武田さんちのじいちゃんばあちゃんは優しくて嘘つくタイプじゃない。西野先生に至っては、仏頂面であまり喋ったのを見たことがない。 「それはやべぇな‥よし!絶対俺達で主釣ってやろうぜ!どんくらいの大きさだ!?」 「大人の男の身長より高かったらしいよ!」 興奮して心臓がドキドキしてきた。 俺が‥俺達が主を釣るんだ。そしたらどうなるんだろう、とりあえず地元のみんなに知れ渡って有名人になるんだ。 学校では女子に騒がれて、男子には尊敬される。 家や学校から出れば大人達からも一目置かれ、更にはテレビの取材まで来たりして‥― 子供の妄想は考え出すと止まらないからな。笑
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