大巨人

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精神科にはレクレーションがある。 特に患者さんが喜ぶのがバスレクである。 バスレクとは病院の所有するバスに乗って いろんな所にいくのだが 普段、病院から出れない患者さんにとっては たまに社会に出れるとあって大喜びだ。 私は、院外回診として たまにそのバスレクについて行く。 Nさんという患者さんが あるビルの横を通った時、 何かビックリした様子。 「Nさん、どうしたんですか?」と尋ねると 「あのビルを動かす大巨人がいるんですよ。」と答えた。 何故かと尋ねると 「このビルは三年前は右にあったんですが 今さっきみたら左に移してあったんですよ。 あれはきっと大巨人がビルを持ち上げて 右から左に移したんですよ。 ビックリしました。」と目を丸くして話してくれた。 意味が初めはわからなかったが しばらくしてNさんのビックリした意味がわかった。 三年前に同じ方向にバスレクに行った。 その時は道から見えるビルは右にあった。 しかし、最近バイパスができて そのバイパスを通ると ビルは左に見えるのだ。 その錯覚がNさんの中に大巨人の妄想を生んだのである。
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