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土曜日。買い物などに行くのだろうか、車の往来はいつもより多い。
そんな状態の表通りから枝分かれした道の先に、その場所はあった。桜ヶ丘駅。大きくもなく、小さくもない、中にパン屋やコンビニ、本屋などが存在するその駅を利用する人間は多い。
そして、その駅の前にある、幾何学的な石造の前に一人の少女が立っていた。手に青系の水玉模様のトートバックを持ち、薄緑色の七部袖のワンピース、紺色のジーンズ。
外側に跳ねた肩までの髪と、少し長めの前髪が風に揺れていた。
彼女――大橋涼子は、携帯ゲーム機を適当にいじっていた。
「涼子ー!」
「お、来た来た」
自分を呼ぶ声に気付くと、彼女はさっきから使っているものとは別のボタンを押して、その画面を変えて、電源を切る。
そしてそれを、そのゲーム機の名が書かれた専用のケースにしまい、鞄に入れると、向こうから走ってくる友人――西本梓(にしもとあずさ)に手を振った。
ショートヘアにボーイッシュな格好をした彼女は、爽やかな印象を与えていた。
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