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意外と人は少なく、彼らはボックス席を陣取る。陣だけが、椅子の手すりを持って、立つ運びとなった。
「三つ目の駅で降りるんだったっけ?」
「うん」
涼子の前に座る梓が、聞く。涼子は頷いた。涼子の隣に座っていた由紀が、涼子に問う。
「えーっと、ところで、何ていう名前だったっけ?その劇団」
「ああ、ちょっと待てよ……」
由紀の質問を聞いた彼女は、鞄の中から一つのパンフレットを出した。どうやら、演劇の案内らしい。
「お、あったあった。これこれ。『風光劇団』」
「『風光劇団』、かー……そこの代表の人が、池上先生の旧友だっけ?」
「らしいよ。はい、チケットチケット」
涼子はその場にいた四人に、パンフレットと同時に出した、チケットを差し出す。
「それにしても、楽しみだな。舞台裏とかも見せてくれるって話なんだろ?」
「プロの劇団の舞台裏とかなんか、滅多に見れないだろうしな」
修と陣は楽しそうに話す。涼子は窓の外に目をやり、二日前のことを思い出していた。
「観劇?」
時は遡り、木曜日。用事があり、職員室に来ていた涼子は、担任である池上彰(いけがみあきら)に呼び止められた。
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