前奏曲

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「乃亜、おかえり。いらっしゃい、高坂君。」 「ただいま。」 「お邪魔します。」 「ねぇ、乃亜。」 「何?」 「もし、地球の命が僕たちだけだったら、二人で生きたいと思う?」 私の部屋でレポートをやっていると緋一(ひいち)は突然そんなことを言い出す。 「何、突然?」 「答えて。」 「出来るなら生きたいな。」 「それは僕が好きだから?それともただ生き続けたいから?」 緋一は一体何を言いたいのだろう? 「ねぇ、一体何なの?」 「聞いているのは僕の方だよ。」 「緋一が好きだからかな。」 「……そう。」 親と暮らしているとはいえ、私達ももう21だ。もう子供ではない。肉体的な関係を持つまでの仲でもある。 緋一のこの言葉は子供を作り、二人で暮らしたいと意味だと私は思った。 だが、違ったのだ。私がその言葉の真の意味を知るのはまだ先のことになる。
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