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俺は玄関のドアを開けて、リビングに向かった。
「遅い!!健全な男子高校生が夜遅くに帰るやなんて!!」
「健全な男子高校生に門限叩きつけんな。つ~か、まだ7時だぞ?」
「ウチ、そんな子に育てた覚えなぃ………」
「今まで育ててくれてありがとう。俺は家を出るよ」
俺の前で、ちっさい生き物が跳びはねる。自称160cmのちっさい生き物が………
コイツの名前は白石 凛。
妹だ。いや、義妹だ。
話が長くなるので省くが、俺とコイツは血が繋がっていない。しかし、義妹という表現は、コイツに怒られるので訂正。
俺が標準語で、凛が関西の言葉なのも、そのせいだ。
「ご飯食べるよね?」
「今日何?」
「筑前煮」
「お前筑前煮好きだなぁ……」
「やって得意料理やもん」
くるりと回り、台所にパタパタと走っていく。
さぁて、コイツの装備でも紹介しよう。
頭 襟足を2つに結い分ける
胴 Tシャツ
足 ハーパン
アクセ1 エプロン
アクセ2 スリッパ
攻撃力 30
防御力 30
かっこよさ 20
こんなものか………
「ん?」
よくみると、髪を結っているゴムは、猫が付いている。
Tシャツの背中にもデフォルメされた猫。しかもデカイ。
エプロンの前には、完全に猫の足形。
ハーパンの裾にも猫。
スリッパにいたっては………もう猫である。
訂正。かっこよさ 0
「ん?ちょっと待て、そのTシャツ俺んだよな?」
びくっとして、凛は立ち止まった。それからギクシャクした動きで俺の方を向き……
ニコッと微笑んだ。
頬を伝う冷や汗はご愛敬。
首がまたギクシャクと横を向き、台所へ……
行く前に俺が捕まえる。っていうか頭を掴む。
「俺んだよな?」
「………てへ☆」
きっと、俺の後ろに般若でも見えたのだろう。凛は一目散に逃げ出した。
俺もすぐに追いかけ、リビングの中で軽い鬼ごっこが始まる。
「勝手に猫のプリント入れるなって何回言えばわかんだよ!!」
「だって可愛ぇぇやろ!?」
「自分のがあるだろ!!」
「お兄ちゃんだって、にゃんこ好きと違うん!?」
「好きだけど学校に来ていけねぇだろぃ!!」
「そんなん我慢したらぇぇやん」
凛は手に取ったテレビのリモコンを『うりゃっ』と投げた。
コースが甘い。俺の頭の上を抜けるだろう。が、背後には……
「ガラス!?…くっそ!!」
しょうがないので両手で掴む。
刹那、ガラ空きになった腹部、主に鳩尾(みぞおち)に鈍痛が走った。
それは、丸くて、オレンジだった。
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