~第1発:Cool Music~

4/13
前へ
/63ページ
次へ
俺は玄関のドアを開けて、リビングに向かった。 「遅い!!健全な男子高校生が夜遅くに帰るやなんて!!」 「健全な男子高校生に門限叩きつけんな。つ~か、まだ7時だぞ?」 「ウチ、そんな子に育てた覚えなぃ………」 「今まで育ててくれてありがとう。俺は家を出るよ」 俺の前で、ちっさい生き物が跳びはねる。自称160cmのちっさい生き物が……… コイツの名前は白石 凛。 妹だ。いや、義妹だ。 話が長くなるので省くが、俺とコイツは血が繋がっていない。しかし、義妹という表現は、コイツに怒られるので訂正。 俺が標準語で、凛が関西の言葉なのも、そのせいだ。 「ご飯食べるよね?」 「今日何?」 「筑前煮」 「お前筑前煮好きだなぁ……」 「やって得意料理やもん」 くるりと回り、台所にパタパタと走っていく。 さぁて、コイツの装備でも紹介しよう。 頭 襟足を2つに結い分ける 胴 Tシャツ 足 ハーパン アクセ1 エプロン アクセ2 スリッパ 攻撃力 30 防御力 30 かっこよさ 20 こんなものか……… 「ん?」 よくみると、髪を結っているゴムは、猫が付いている。 Tシャツの背中にもデフォルメされた猫。しかもデカイ。 エプロンの前には、完全に猫の足形。 ハーパンの裾にも猫。 スリッパにいたっては………もう猫である。 訂正。かっこよさ 0 「ん?ちょっと待て、そのTシャツ俺んだよな?」 びくっとして、凛は立ち止まった。それからギクシャクした動きで俺の方を向き…… ニコッと微笑んだ。 頬を伝う冷や汗はご愛敬。 首がまたギクシャクと横を向き、台所へ…… 行く前に俺が捕まえる。っていうか頭を掴む。 「俺んだよな?」 「………てへ☆」 きっと、俺の後ろに般若でも見えたのだろう。凛は一目散に逃げ出した。 俺もすぐに追いかけ、リビングの中で軽い鬼ごっこが始まる。 「勝手に猫のプリント入れるなって何回言えばわかんだよ!!」 「だって可愛ぇぇやろ!?」 「自分のがあるだろ!!」 「お兄ちゃんだって、にゃんこ好きと違うん!?」 「好きだけど学校に来ていけねぇだろぃ!!」 「そんなん我慢したらぇぇやん」 凛は手に取ったテレビのリモコンを『うりゃっ』と投げた。 コースが甘い。俺の頭の上を抜けるだろう。が、背後には…… 「ガラス!?…くっそ!!」 しょうがないので両手で掴む。 刹那、ガラ空きになった腹部、主に鳩尾(みぞおち)に鈍痛が走った。 それは、丸くて、オレンジだった。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加