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「でも……何で俺が…」
「だって友達じゃん?」
「………他にもクラスメイトいるだろ!?」
いよいよ頭にきて、俺は机を両手で叩きつけながら立ち上がった。
「他の子達がアイツらを友達だと思ってると?」
そう言って教師は目を細めた。
俺は力が抜けて、イスに崩れ落ちた。
だって、余りにも理不尽だろう?
確かに俺らと他の奴等は違うけど、でも同じクラスメイトじゃないのか?
オレンジ色の光を投げ込んでいた太陽は、もう山に消えようとしている。教師と俺の間に沈黙が糸を張った。
「なんとかなんねぇのか?」
「自分で考えなさい。高校生でしょ?」
高校生だからだよ。この時期にこんなこと言われて大丈夫な訳がない。一抹の望みを掛けて教師に助力を仰ぐも、それは他愛もない一言で突き返された。
と、そこまで考えた俺の頭に、ある情報が浮かんできた。
「そう言えば、噂で聞いたんだけど」
「何を?」
「この高校が…来年から女子校になるって」
教師は目を丸くした。
そりゃそうですよね、俺らが留年だって騒いでんのに、女子校になんかしませんよね?
「よく知ってんね。まさか、とおくんってば情報ツウ?」
ガタンッッ。
「いいこけっぷりだ」
教師は、グッという効果音と共に親指を立てた。
俺は考える。
留年→女子校に変校→仮入学生びっくり→トラウマ?
「……あれ?……目から何かが……あはは…しょっぱい…」
「泣くな同志、泣いたら明日が晴れないよ?」
どこのゲームのヒロインだコラ。同志じゃねぇし気安く人の肩に手を置くな。なんでちょっとニヤニヤしてんだよ。この状況を楽しむな外道。
「どうすんだよ、女子校に男子って…」
教師は、『ん~』と言いながら顎に指を当てた。
「まぁ……ドン引き?」
ウィンクは止めろ。軽いトラウマになるから。あと、その忌々しい親指を隠せ。
「っていうか新入生ゼロかも」
「う…」
「そうなったら、教頭キレんな~」
「うっ……」
「担任の僕も『監督不届きです』とか言われて、クビだろうな…」
「ううっ………」
「あぁ~あ。こんなことになる前に死んどけば良かったなぁ」
「……………」
「でもまぁ今からでも遅くないかな」
教師はそう言って、窓の枠に足をかけた。
俺は止めんぞ。ダメ。ゼッタイ。
「……ばいばい」
教師は身を投じた。目からキラキラした分泌液が舞い散り、教師の軌跡を型どっていた。
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