~プロローグ~

3/3
前へ
/63ページ
次へ
「でも……何で俺が…」 「だって友達じゃん?」 「………他にもクラスメイトいるだろ!?」 いよいよ頭にきて、俺は机を両手で叩きつけながら立ち上がった。 「他の子達がアイツらを友達だと思ってると?」 そう言って教師は目を細めた。 俺は力が抜けて、イスに崩れ落ちた。 だって、余りにも理不尽だろう? 確かに俺らと他の奴等は違うけど、でも同じクラスメイトじゃないのか? オレンジ色の光を投げ込んでいた太陽は、もう山に消えようとしている。教師と俺の間に沈黙が糸を張った。 「なんとかなんねぇのか?」 「自分で考えなさい。高校生でしょ?」 高校生だからだよ。この時期にこんなこと言われて大丈夫な訳がない。一抹の望みを掛けて教師に助力を仰ぐも、それは他愛もない一言で突き返された。 と、そこまで考えた俺の頭に、ある情報が浮かんできた。 「そう言えば、噂で聞いたんだけど」 「何を?」 「この高校が…来年から女子校になるって」 教師は目を丸くした。 そりゃそうですよね、俺らが留年だって騒いでんのに、女子校になんかしませんよね? 「よく知ってんね。まさか、とおくんってば情報ツウ?」 ガタンッッ。 「いいこけっぷりだ」 教師は、グッという効果音と共に親指を立てた。 俺は考える。 留年→女子校に変校→仮入学生びっくり→トラウマ? 「……あれ?……目から何かが……あはは…しょっぱい…」 「泣くな同志、泣いたら明日が晴れないよ?」 どこのゲームのヒロインだコラ。同志じゃねぇし気安く人の肩に手を置くな。なんでちょっとニヤニヤしてんだよ。この状況を楽しむな外道。 「どうすんだよ、女子校に男子って…」 教師は、『ん~』と言いながら顎に指を当てた。 「まぁ……ドン引き?」 ウィンクは止めろ。軽いトラウマになるから。あと、その忌々しい親指を隠せ。 「っていうか新入生ゼロかも」 「う…」 「そうなったら、教頭キレんな~」 「うっ……」 「担任の僕も『監督不届きです』とか言われて、クビだろうな…」 「ううっ………」 「あぁ~あ。こんなことになる前に死んどけば良かったなぁ」 「……………」 「でもまぁ今からでも遅くないかな」 教師はそう言って、窓の枠に足をかけた。 俺は止めんぞ。ダメ。ゼッタイ。 「……ばいばい」 教師は身を投じた。目からキラキラした分泌液が舞い散り、教師の軌跡を型どっていた。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加