「妬み」と書いて「したしみ」と読む奴ら

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「では、判決を言い渡す」 カンッと壇上を木鎚で叩く音が響き渡る。 「被告人、七星刀弥への判決は…」 居合わせた全員が固唾を呑んで、裁判長の下す判決を見守る。 精魂尽き果てた僕は、もうどうにでもなれとため息を吐いた。 裁判といっても、これは本当の裁判ではない。むしろ無罪がない魔女裁判に近い場所。 場所は二年六組。裁判長は担任。傍聴席の聴衆はクラスのみんな。弁護士はいなく、検事はメリアさん。 唯一の救いであるはずのメリアさんが僕を告発する側に廻り、まさに状況は四面楚歌。 (僕がなにをしたっていうんだ……) 普段から他人が幸せになることを妬むクラスメートたちは、前からメリアさんと付き合っている僕を目の敵にしていた。 それがイジメじゃないとは分かっている。 実際、彼らの妬み恨みは、僕だけじゃなく、他クラスにも向けられている。 たまたま僕に矛先がよく向くだけ…向くだけ…言ってて悲しくなってきた。 「こら! 被告人は顔を上げろ!!」 「誰が被告人だ!!」 つい感情的になって卓上の担任に対して声を荒げた。 別段、間違ったことを言っていないと思う。 なのに……。 「「「お前だ!!」」」 怒号に等しい連鎖の声。傍聴席として設けられた後ろの机に座るクラスメートたちが一斉に立ち上がった。 「……メリアさん、助けてよ」 僕の恋人にして、僕を告発したメリアさんに助けを求める。 それだけ僕には余裕がなかった。
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