「妬み」と書いて「したしみ」と読む奴ら

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「二人とも、朝から喧嘩しない」 神楽さんとカロルの関係もこの二週間でだいぶ前進したな、と僕は率直に感じる。 当初は不安だった生活もカロルはすんなりと順応していた。 「…申し訳ありません。私としたことが刀弥様の前で声を荒げてしまいました」 まだ怒りが鎮火しきっていないものの、神楽さんは節度ある大人としての対応をした。 「や~い怒られてるの」 「カロルもだよ」 え~、なんで~?と言い返すカロルに、ここは僕が叱るべきなのかと考える。だが、僕は怒るとか叱るって苦手なんだよなぁ。 大人になったらきっとそうも言ってられないけど、叱るだけが全てじゃない気がする。 僕は頭二つ分低いカロルの頭を撫でて誤魔化す。 それに満足したのか、カロルはえへへ、と笑った。 「刀弥様、そろそろ朝食に致しませんと、あの方が…」 「おはよう刀弥~」 玄関のベルも鳴らさず、彼女は家の中に上がり込んだ。 それは当然、メリアさんだ。 「ほら…」 神楽さんがため息を漏らしながら、食堂に消えていく。 きっとメリアさんの朝食を準備しに行ったんだ。 「おはよう、メリアさん」 「うむ、今日も刀弥が元気でなによりだ」 黄金に輝く麦畑のような髪を揺らしながら、メリアさんは僕のそばに寄ってきた。 「おっ、今日も元気そうだなカロル」 「おはようメリア姉さん」 挨拶を交わす二人、そこにギクシャクとした雰囲気はない。それが僕にとっては嬉しかった。 「今日よりテストだな。勉強は大丈夫か?」 僕とは違って目の下に隈もなく、メリアさんは普段と全く変わらない落ち着きを見せる。 「不安は拭えないけど、やれるだけはやったよ」 「ふむ、常にベストを望んでも、そうはいかんのが世の常だ。何か解らないところがあったら聞くがよい」 その言葉に僕はうん、と頷く。 ここまでは何も問題はない。
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