1539人が本棚に入れています
本棚に追加
では何がメリアさんの逆鱗に触れたのだろうか。
僕は朝の続きを思い起こす。
朝、メリアさんと一緒に登校するのが日常となっていた。
メリアさんは毎朝、必ず僕の家まで来て僕の腕に手を回して登校しようとする。
傍目から見るとバカップル以外の何者でもないのだが、メリアさんはそんなこと気にも止めていない。
いや、むしろそうすることで狼狽(ろうばい)する僕を見るためにしている気さえする。
彼女は史上最強のサディストだ。
僕が本当に嫌がることはしないが、断るに断りきれないことなら何でもやろうとする。
だから、今の状況も彼女にとっては至上の喜びに近い状況だろう。
見ればメリアさんは高揚して笑顔に満ち満ちている。
う…
周囲からの視線が痛い。
メリアさんの美貌の高さは誰もが納得する。
公認の彼氏である僕が居ても、毎日のようにラブレターが送られてくるほどだ。
そんなメリアさんと腕を組んで登校。
主に男子から殺意の籠(こ)もった視線が雨霰(あめあられ)と僕限定で降り注ぐ。
暴動が起きないのが奇跡に等しい。
「今日は社会と数学であったな」
話題をふる余裕もない僕に耐えきれず、メリアさんが話題を自らふってきた。
「えっ、あっ、うん」
歯切れの悪い返事しか出来なかった。
メリアさんが一言話す度、男子から千秋(せんしゅう)の思いに焦がれるようなため息が漏れ、僕が一言話す度、抗争直前のヤクザ屋さんみたいな殺気が放たれる。
この年で胃痛を覚えそうな状況で、まともな返事を返せるはずもない。
最初のコメントを投稿しよう!